通訳案内士って大変だと聞きますが、辛いとか苦しいと感じることってありますか?
もしもあるとすれば、どんなことが、大変で辛くて苦しいですか?
実際のところを知りたい。
そんなご要望にお応えします。
過去6年間のガイド経験を振り返り、「大変だった?」と思うことをまとめました。
まあ、辛いとか苦しいと思うかどうかはさて置き。
(これが辛くて退職する人がもしかしているかも、と感じたことを書きます)
通訳案内士の大変なところ?辛いとか苦しいと思うかどうかはさて置き
通訳案内士の大変なところですね。まあ全く普通に起こり得ることですが。
ずっと日焼けする
笑われるかも知れませんが...通訳案内士の大変なところは、「日焼け」です。
外の仕事なので、気をつけていても、ある程度の日焼けは避けられません。
繁忙期の春秋以外に稼働しても、日光を浴びつつ夏は暑く冬は寒いです。
(ガイドは仕事に熱中し暑さ寒さを忘れられても、お客様の体感温度に気配り必要)
春から秋にかけての日焼けはもちろん、冬のガイドも弱い日差しで焼けます。
売れっ子中の売れっ子ガイドさんは、日焼けが褪める暇は無いのではと察します。
わりと移動が多め
通訳案内士の大変なところは、移動が多いことです。
自宅から出発地まで、バスや新幹線、飛行機などの交通機関で移動したあげく、場合によってはツアーも長い移動を伴ったりします。(下見もそんな感じ)
ツアー終了後は、遠くの帰着地であれば、再びそこから自宅への長い移動です。
内容によって前泊や後泊もあり、日帰りツアーも連続すると、移動のため家へ帰れなくなります。(自分が特に忙しいということでなく職業的な特徴)
移動の途中に下見を挟むこともあれば、それが辛く苦しい人もいるかもしれません。
(よく知っている場所でも、念のための再確認など)
長い移動中は真剣に予習復習をするか、スイッチが切れたように眠りに落ちるかのどちらかです。
時に異文化の矢面にたつ
通訳案内士の大変なところは、時に異文化の矢面に立たされることです。
資格を取ってほどなくして、とある国からの団体ツアーに呼んで頂きました。
・終日ツアーだったのですが、前日から曇りで雨が心配でした
・何とか場を和ませたいと思い、てるてる坊主を作り持参しました
ところが出発の車内挨拶で、てるてる坊主のお話を始めた時のことです。
ツアー団長から、ご要望を頂きました。
手短に言うと、「我々は唯一絶対の神を信じる。てるてる坊主は歓迎しない」といった趣旨のお知らせでした。
「仏教のお坊さんが由来」と説明したのが宗教にふれてしまった形になります
夜中までかかって完成したてるてる坊主を、悲しみを悟られないようバッグの底にそっと押しやりました。
「今日は一日晴れて楽しく過ごせますように」とバスのお守りとしてぶら下げよう…と計画していた思いも空しく、気持ちを切り替えツアー続行です。
ツアーが終わってお別れの時を迎えた空港で、お客さまの一人が親切に微笑みながら、売店で購入されたプレゼントを手渡して下さいました。
皆さまをお見送りした後にようやくひと息ついて、包みを開くと、てるてる坊主の可愛いキーホルダーが入っていました。
苦い経験をしたけれど、少し救われた瞬間でした。
ガイド以外の準備もある
通訳案内士は、ガイド以外の準備に時間がかかるのも意外と大変かもしれません。
自分の居住地ではない場所でガイドする際も、出発地へ移動のための手配は基本的に自分でします。(交通費は支給されます)
荷造りをしたり、時刻表を見ながら予約などしていると、過ぎていく時間は早いです。
ガイド間際の予習や復習時間は取りづらくなります。(自宅から通えるツアーでも似たような感じです)
仕事中は空腹ぎみ
通訳案内士の大変なところは、食事を案外ゆっくり取れないことです。
出された料理を口にできるのは、お客様のお世話が一通り終わってからで、食事中も英語で追加注文のお手伝いや、メニューの説明・会話と色々あります。
・一番最後に食べ始めて真っ先に食べ終わるか、あるいは、お客様をお待たせしないよう食事を終えます
・ベジタリアンや宗教、アレルギーによる食材制限にも対処します
・外国のお客様だと、飲み物を自分好みに要望されることも多いです
(氷なしのお水・ダイエットコーク・ミルク多めのコーヒーなど)
ということで、お客様と食事することがあっても、真の意味では味わえないことが多いです。(注.稀には本当に美味しく頂ける時もあります)
わたしの場合、早食べが苦手で、相当に意識しても追いつけないのが難点です。
・プライベートであれば、苦手な食材も出された料理は全ていただきます
・仕事では時間が足りず、好きな食べ物でも残してしまうこともあります
※自由に注文できる時は単品料理などで残さないよう工夫します
そんな時は、食材や食費を充てて頂いたことが申し訳なく、心苦しく辛く思います。(そして、ツアー中のガイドは意外と空腹かも)
あと家を出る時も食事はさっと済ますので、それも原因ですね。
辛いか苦しいかはさて置き、他にも通訳案内士の大変なところ
苦しいか辛いかはさて置き、通訳案内士の大変さを敢えてあげるなら下記になります。
依頼が同じ日に重なる
通訳案内士の大変なところは、どういうわけか同じ日に依頼が重なることです。
これは、一年を通して稼働態勢にある通訳ガイドなら、多かれ少なかれ経験していると思います。
依頼が来るときは、なぜか同じ日に重なりがちです。
一ヶ月近く仕事がない時もあるかと思えば、仕事がある時は不思議と同じ日に集中します。
添乗員をしていた頃は、見切りをつけて添乗を入れた日に、後から通訳ガイドの依頼が重なったりしました。
これが本当に不思議です。
売れっ子中の売れっ子ガイドさんであれば、後から長い日数の依頼が重なるのを見越して、単発の仕事は敢えて辞退もできるかと思います。
わたしは、まだそこまで思い切れません。
日帰りの仕事に、後から長めの仕事が重なっても、先にご依頼頂いた方が優先となります。
まとまった仕事を増やしたい通訳ガイドには、やや辛く苦しい状況ですね。
仕事が急に無くなる
通訳案内士の大変なところは、様々な要因で仕事が急に無くなることです。
最近は台風によるキャンセルが増えていると実感していたところ、2020年の今年は新型コロナウイルス感染拡大が大きな痛手となりました。
・お客様も生身の人間ですから急に体調を崩されることもあります
・予定していた日にちに、急病で来られなかったこともありました
過去には、前日にご連絡を頂いたこともあります。
というメッセージでした。
急な変更やキャンセルは普通にありますが、それを辛く苦しいと思えば、通訳ガイドは続けにくいかもしれません。
天気はコントロールできない
通訳案内士の大変なところは、天気をコントロールできないことです。
旅を楽しむには、天気が良いほうが有利に決まっているのですが、通訳ガイドの願いも空しく、時に大荒れの一日となります。
関東あたりの通訳ガイドさんで、「富士山の天気は難しい」と噂には聞きますが、地方の各地でも天気は侮れません。
わりと順調だった観光地で、あれよあれよという間に霧と雲が立ち込めて、着いた時には何も見えなかったことが何度かありました。
さっきまで晴れていたのに何?と思いますよね。
初めてそんな目に遭った日は、辛く苦しいと感じるかもしれません。
下見は自己負担でおこなう
通訳案内士の大変なところは、下見は基本的に自己負担であることです。
下見には、予算も時間(計画&実行)もわりと多く費やします。
新人であれば下見費用が報酬を上回ることが殆どではないでしょうか。
(皆それは理解して参入していることと思いますが)
短期の費用対効果という点で見ると、辛くて苦しい仕事と思われて無理のないことですね。
通訳案内士が稼げない職業と言われるのは、そういった事情もあるかと思います。
事務処理に時間が必要
通訳案内士の大変なところは、ツアー前後の事務処理に時間が必要なことです。
ツアーの前には、旅程や必要物の確認などあり、ツアーが終われば精算書や報告書、請求書といった書類の作成や提出が発生します。
通訳ガイドと言えば、「当日だけ現場にあらわれて英語を話せば務まる」と思っている方もおられるかも知れませんが、デスクワークも少しはあります。
仕事が立て込む繁忙期は、事務処理を溜めてしまうと、辛く苦しいかもしれません。
ということで、まとめです。
- ずっと日焼けする
- わりと移動が多め
- 時に異文化の矢面にたつ
- ガイド以外の準備もある
- わりとお腹は空いている
- 依頼が同じ日に重なる
- 仕事が急に無くなる
- 天気はコントロールできない
- 下見は自己負担でおこなう
- 事務処理にも時間が要る
とまあ、こんな感じで。大変とか辛いか苦しいかはさて置き。
そんな人は、きっと楽しく通訳ガイドできると思います。
今回は以上です。お読みいただき、ありがとうございました。