逐次通訳のメモの取り方が難しく、練習や対策に苦しんでいます。
一生懸命メモを取るも、上手くいかず、ほとんど役に立たなくて。
そんな風に悩んでいませんか?
当ブログ運営者は、英語の通訳案内士です。
通訳専門ではないため、偉そうに言える立場にありませんが...
二次試験の対策(逐次通訳)に悩む受験者が多いと聞き、力になりたく記事を書きます。
通訳のメモの取り方や練習について逐次通訳のため意識するとよいこと
通訳のメモ取りって難しいですよね。
あまり他に見ない特殊技術のため、語学力だけでは解決できない部分がある気がします。
初めにお断りしておきますが...
今回お伝えするのは、「通訳案内士の国家試験」のための逐次通訳でメモ取り作戦です。
専門の通訳さんから見て「それは違う」と感じる部分もあるかもしれませんが、あくまで「通訳案内士(二次試験)のための考察」としてご容赦ください。
逐次通訳でノートテイキングの問題点
通訳のメモ取りについて、語学の専門用語で「ノートテイキング」と言ったりもしますね。
主に「逐次通訳」の場面で使われますが、大変に特殊な技術のため、「ノートテイキング自体、上手く体得できない」と感じる人も多いようです。
わたしも社会人になってから語学をやり直すまで、通訳のメモ取りには、漠然としたイメージしかありませんでした。
「ノートテイキング」とは乱暴な例え方をすると「速記」のようなもので、しかしながらメモ取りに使う「文字(というか記号)」そのものは、通訳者によって独自に異なります。
「これが正解の文字」といった「唯一の答」が無く、そのためメモの仕方に悩み、苦しむ人も後を絶ちません。
なお「逐次通訳(ちくじつうやく)」とは「話し手の発言が一通り終わった後で訳す」通訳技法のことを言います。
「同時通訳(どうじつうやく)」のように「話し手の声に重ねて訳す」ことができないため、「メモ取り技術」と同じく「記憶する技術」もカギとなります。
日本語をメモしながら記憶ができない
本記事の「逐次通訳」「ノートテイキング」については、通訳案内士の二次試験ということで「日本語から英語に訳すためのメモ取り」が一番の課題ですよね。
日本語を英語に訳出する際の悩みとして、「日本語の音声をメモしながら英語に訳すための記憶ができない」といった声がよく聞かれます。
というのも
- 日本語で話を聞く
- 何かの文字で書き取る
- 話の内容を理解しながら書く
- メモ&理解は英訳を意識しながら
- メモした話を英語に置き換える
と、普段の生活ではあり得ない、複雑な過程を辿らなければならないからです。
メモを取っても後から解読ができない
何とか必死にメモを取るも、「後から見返すと書いた本人でさえ解読できない」という悲しい事態に陥ることさえあります。
後から見ると穴だらけ、字も読めなくて、結局ほとんど役に立たない。
なんて悩んでいる人もいるのではないでしょうか。(わたしも経験あります)
そこで聞きたいのですが、悩めるあなたは、メモに使う文字をどんな風に書いていますか?
もしかして「言葉」に頼り過ぎていないでしょうか。
ノートテイキングは補助で記憶が主か
通訳のメモというと、「覚えたことを思い出すための補助」と考える人もいるかと思います。
「基本は記憶でノートテイキングは補助」との見方で、「だから話された内容を記憶した方がよいのか?」と解釈しがちです。
けれど「通訳のメモ取り」とは実のところ「話された言葉を全て記憶するため補助」なのでしょうか?
当ブログ運営者が思うに、「ノートテイキング」とは「記憶の補助」というより「概念の抽出」とした方がしっくり来ます。
通訳のメモ取りとは、「言葉の上辺だけを書き写すもの」ではなく、「理解した意味を書き起こすもの」と実感しているからです。
話された言葉自体を全て覚えるのが無理でも、概念の抽出なら何とかできますよね。
概念とは、分かりやすくいうと「本質的な意味内容」みたいな感じです。
逐次通訳のメモ取り練習で通訳の本質に少しでも近づいておくためには
通訳の「ノートテイキング」とは「記憶」というより「意味の取り出し」ということで、さらに掘り下げて考えていきます。
意味内容を理解しながらメモ取りを
ここからは、先に取り上げた「後からメモを見ても解読できない問題」への対策になります。
通訳案内士の二次試験(逐次通訳)だと、出題は「日本に関わる事柄を英語に訳す」形式でしたね。
訳し方としては日→英の方向になります。そこで思うのですが...
・メモを取る際は、話された内容を覚えようとせず、理解することに軸を置いてみてはどうでしょうか。
・出来上がりの英語をイメージしつつ、「日本語による記憶」ではなく「英語による再現」の方を向き、キーワードを書き留めると記憶に残りやすいからです。
・この時すでに、通訳者の頭の中には、訳出された英語がぼんやりと存在する感じになります。
そのためメモ書きは日本語とも英語ともつかぬ、よく分からない何かになるでしょう。
第一線で活躍するベテラン通訳者のメモを見ると、そこには言葉の域を超えた、記号とも数字とも絵文字ともつかぬ独特の世界が繰り広げられています。
ただし、わたし達の場合、書いた本人がメモ内容の意味を見失っては何にもなりませんね。
ノートテイキングと記憶で互いに補う
ところで「書いた本人が解読できないメモ書き」とは、一体なぜ存在するのでしょう?
役に立たないメモになるのは何が原因なのか?
突き止めるため、今いちど通訳の過程を振り返ります。
逐次通訳とは、わたしの場合、以下の手順で行っている実感です。
通訳の手順
スタート:「日本語で話された言葉を聞く」
「聞いた言葉から内容を書き出す」…「内容」とは「概念」なので言葉である必要はない
↓
「◎書きながら話の中身を理解する」…「言葉の表層」ではなく「概念」として理解する
または
「△書きながら話の中身を記憶する」…単なる「記憶」だと無理解の「暗記」が起こり得る
上記、△のやり方だと「意味の理解」ではなく「言葉の暗記」に頼り過ぎるため、覚えていないと再現できない
↓
「メモ&理解は英訳を見越して行う」…「概念」を掴んで書き留めれば意味は再現しやすい
ゴール:「メモを見ながら話を英語で再現する」
以上の手順に照らし合わせ、「本人すら読めないメモ」が出来上がるのは、おそらく「意味」と「理解」ではなく「記憶」と「言葉」に頼り過ぎているからでは?
と当ブログ「ともみろく」は考えます。
(あと単純にメモの場数を踏んでいないのもあると思います。練習が必須ですね。)
「メモ」と「記憶」どちらにも偏らず、「意味」と「理解」を繋いでみるのはどうでしょうか。
通訳の本質とは記憶より意味の抽出だ
ここまで、通訳のノートテイキングについて、思うところを書いてみました。
悩めるあなたに、当ブログの言わんとすることが、伝わっていればいいのですが。
つまるところ「通訳メモとは、記憶より意味の抽出である」ということです。
あともう、本番「いよいよダメだ~」と感じたら、とにかく
・固有名詞(人名・地名・お祭りの名など)
・数字(月・日付・期間・人数など)
・全体のテーマに関わる語句(○○の××を話している?と俯瞰する)
だけは、一心不乱でメモまたは理解しておくことです。
変えようがない数や名前を言い間違えるのが、最も致命的だと思うので。
何の話題か大まかに分かれば、あとは持てるもので、懸命に再現するしかありません。
と流れがやや乱雑ですが、今日は、とあるエピソードで記事を締めたいと思います。
言葉の表層のもっと向こうにある意味
以下は、わたしの大好きなバンドのベーシスト(日本人)が、ラジオで語っていた逸話です。
ある日のこと。
海外ミュージシャンと対談することになり、英語を話せないベーシストの彼は、通訳さんをお願いしたそうです。
ところがその日に入ってくれた通訳さんは、音楽の背景知識があまり無かったようで、楽器好きの立場から
「言葉が分かっても音楽に理解がないと適切に訳せない場合もあるよね」
と、ベーシストの彼が、しみじみ振り返っていたのが印象的でした。
(気楽な笑い話として披露されていましたが)
「ギターのブリッジ」を「橋」みたいに訳すなど(わたしの記憶なので、部位が覚え違いだったらごめんなさい)、ややぎこちない所があったようです。
これなど「意味」ではなく「言葉の表層」しか見えなかった例かと思います。
けれど言われてみれば、ギターの部位で「ナット」「フレット」「ピックアップ」「コントロール」なんて、音楽好きだと思っていた自分にも、ピンと来なかった用語ばかりです。
わたしも言語力はまだまだで、人の事を言える立場ではありませんでした。
こんなエピソードを深く胸に刻み、ずっと勉強を続けていくしかないのだと思います。
で、結局のところ何ですか?とあなたは思うかもしれないけれど。
もう少しやさしく、かみ砕いて書いた過去記事もあります。
よろしかったら今一度、合わせてご覧ください。